日本にはあまり目立たないけど、
すごい!!と、私が思っていることに一つに
文様の世界があります。
日本の文様の多くが、【明るい未来】を願った願掛け
と言っても過言ではないくらいに、意味が込められています。
どんなにしっとりと落ち着いた文様でさえも、願われている内容は、
より良くなること。
その当時の日本がもしかすると非常に過酷な状況だったことも予想されますが、日本の先人の皆様に願われての今!なのかもしれない!と思うと、胸アツです。
そして、文様は器にもたくさん使われているので、今回は器で見かける文様をピックアップしてみました。
そして、恐れ入りますが、手元にない文様はイラストで・・・スイマセン。
和食器によく見かける文様
1.梅文 うめもん
さいえの梅文はとてもかわいらしい感じですが、紅白梅とかゴージャスな梅も器では描かれます。
春の訪れを知らせる文様としても使われますが、↓のようなかわいい梅だったら、通年でもよいかな。と思います。
祈願の意味としては、合格祈願、安産祈願、学問成就が挙げられます。
2.桜文
器にも数多く描かれていて、桜は春以外にも通年使ってもOKとされる文様。
お店でも桜文の器は年齢問わず女性に人気がありました。
桜には稲の神が宿るとされていて、開花状況でその年の作物の豊凶を占うそうです。
桜の開花情報や桜前線が今もなお、ニュースに取り上げられるのはそのためかもしれませんね。
桜文は器以外にも着物や家具、小物類に至るまで、本当にメジャーな文様です。
五穀豊穣、豊作祈願の文様でもあります。
3.魚文
鯛なのか、鯉なのか、若鮎、金魚や名もなき魚の時もある。
そのまま魚の形をした器なども。
魚料理が多い日本では、魚文様もメジャーです。
鯛はお正月をはじめ、おめでたいときにふるまわれる魚でもあり、
「おめでたい」と、開運招福を祈願します。
4.うさぎ文
こちらも女性に人気があった文様。
古いデザインというよりは、新しいウサギのモチーフとして、見かることが多かったように思います。
ウサギは子孫繁栄、月の象徴という意味もあるそうです。
ウサギもウサギの形そのままの珍味入れや箸置きもよく見かけます。
かわいいですね!
5.千鳥文
つがいで描かれることも多い千鳥。
千鳥は特別、何かの種類の鳥、というわけではなく小鳥として描かれています。
子育祈願とされています。夫婦円満という意味もどこかで見たことある気がします。
6.ツバキ文
寒い冬から春にかけて力強く咲くため、呪力のある聖なる花として、お守りのようにつけられていた椿文。また、武家ではぽとりと首が落ちるように花が落ちるので、縁起が悪いともされていたそうです。
お店では椿が好きというお客さんが数名いました。
文様から元気をもらう、花を思い出すというのはすてきなことですね。
7.唐草文
唐草文は、タコ唐草という呼び名で器にもよく使われている模様。
アラベスクともいう唐草の起源は古く、古代エジプトのパルメット文がギリシャへ、インドのガンダーラ、中国を経て、大陸から日本にやってきました。植物がモチーフになった唐草文はその歴史と力強さで今なお、身近に目にする文様です。
菊やブドウなど、他の文様との組み合わせも多いです。
8.大根文
居酒屋やお料理屋さんで、おしんこを全部食べ終えたときに、ふと見かける器の絵柄にありがちなのが、大根文。
春の七草では、「すずしろ」聖なる植物という意味。夫婦和合の意味も込められるそうです。
大根には消化促進の効果があるそうなので、お料理屋さんの小皿に食後、大根の絵柄が出てくる仕掛けは、「おなか壊さないでね」なんて意味だとすると、お店の人からのすてきなメッセージですね。
9.紅葉文
春の桜に対応するように、秋は紅葉、楓の文様が目に入ります。
こちらは秋冬限定のように思えます。そろそろ紅葉の時期だ、と器で気づかされる経験などあったのではないでしょうか?
武家には立身出世の願いが込められたり、はたまた葉っぱが色づくことから恋愛成就の願いも込められたそうです。
みなさんも思いを込めてみては・・・。
10.菊文
無病息災、健康を祈願する重陽の節句(9月9日)は菊が欠かせない節句。魔除けの意味、抗菌の薬効などもあるとか・・・
また、皇室や国の機関の紋章の一つに菊花紋章があります。日本のパスポートの表紙もドドーンと菊花ですね。
器では、菊そのものの形を模した器はみなさんもよく見かけているはず。
11.ブドウ文
最近はさいえの器にブドウはありませんが、お店時代、ブドウ模様の器は人気がありました。
ブドウの葉っぱと実が描かれた器は、どこか洋風な雰囲気もあって、華やかでしたね。
たくさん実をつけることから、五穀豊穣、子孫繁栄の祈願としてのモチーフにもなります。
季節はやっぱり秋ですね。
他にも植物、花は本当にたくさんいろいろな種類がモチーフなっています。
アジサイ、ススキ、藤、葵、ひょうたんなどなどなど、
季節が描かれているといっても過言ではありませんね。
動物もよく見かけるのは鳥、ウサギですが、
信楽にはたぬきの置物、カエル、だるまやフクロウ、招き猫など、置物ではいろいろな動物もモチーフになっています。
他にもよく使われる模様の名称
よく見かけるものを思いつくままにメモ
千筋
あられ
トクサ
扇、団扇
唐辛子
などなどなど。
本当にいろいろな文様が使われていますね。
着物に比べると、食べ物を乗せるという観点から、
五穀豊穣や季節を描いたものが多いように思います。
最近の器ではあまり文様を強調した器は少なくなっているのかな?と感じます。
文様はなく無地で、陶器の質感や器のフォルムを丁寧に作っている印象です。
さいえでは、器のほとんどが文無しです。(文字にすると悲しい・・・)
文様に込めた思い
文様に込められた思いは、いわゆる「迷信」「おまじない」みたいな感じで、
科学的根拠もなければ、語呂合わせであったりするのかもしれませんが、
病気のことが詳しくわからなかった時代、
医療や薬が十分に行き届いてない時代、
ささやかな言い伝えがどれほど大事であったか、
どれほど人々が無事や安寧を願ったか、
それは日本がいかに厳しい環境だったのかを想像させます。
今となって、そんな必要はなくなったかもしれませんが、
でもこれだけたくさんのメッセージを文様に込めているのですから、
日本の自然災害などは侮るなかれ。
と、私はメッセージを受け取りたいな。と思います。
それに、意味は分からずとも、日本にいろいろな文様があることをたびたび出会って知っておくのも、
日本文化を楽しむコツかもしれない。と思います。その一つ一つの小さな記憶が、折り重なっていくのが素敵なコトですよね。
文様のメッセージ、文様のおまじない、願い事、皆様もまたふと身の回りを見て、思い出してみてください。
参考文献:
『日本の文様解剖図鑑』筧菜奈子 文・絵 X-Knowlwdge、『日本の装飾と文様』解説・監修 海野弘 PIE、『開運!日本の伝統文様』水野惠司・監修 藤依里子・著 日本実業出版社 『日本料理 基礎から学ぶ 器と盛り付け』畑耕一郎 柴田書店